生きているということ
ポエトリーリーディングというのは、その訳通り”詩を朗読すること”を指す言葉だけれど、近年は歌唱法としても使われている。その歌唱法とはヒップホップのラップに似てるのだけれど、韻や音程をより砕けた感じにし、詩を朗読するように歌唱する。本ブログの「朝弱い人へ part.2」で紹介した「SOSO」もポエトリーリーディング。
メロディやリズムを奥に追いやる分、歌詞がストレートに入ってくる。ヒップホップと同じく、侘び寂び文化の日本人にはあまり向かない音楽だと思うけど、僕は好き。
日本でポエトリーリーディングで有名なのは古くは「Tokyo No.1 Soul Set」、近年じゃ札幌を拠点に活動する「THA BLUE HERB」のBOSS THE MC。他にはMOROHA、神門など。いとうせいこうはちょっと違うか?ヒップホップ、アンビエント、イージーリスニングなんかを聴かない人には全く分からないアーティストかもしれない。
そんなポエトリーリーディング。ニッチな世界だから認知度は低いが、コアなファン層が存在する。もちろん、曲も心に響くものがたくさんある。
谷川俊太郎の詩「生きる」を音楽に昇華させた同名の「生きる」という曲がある。声が魅力的な 不可思議/wonderboy という若きアーティストが”生きるということ”について音を奏でた曲だ。
生きる / 不可思議/wonderboy (track by Yuji Otani)
ある詩を元にするという方法は、古典の音楽を使う”サンプリング”と同じだ。音か詩かの差でしかない。それが出来るのは、このポエトリーリーディングだからこそだからだろう。歌詞がズンズンと心に響く。
“ 生きているということ
のどがかわき
木漏れ日がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
生きているということ
鳥がはばたき
海がとどろき
かたつむりははうということ
あなたの手をつなぐこと”
不可思議/wonderboyのこちらの曲のトラックが素晴らしい。こういう音楽には、映像は不要(むしろ邪魔)だと思うんだけれど、ちょっと紹介させてください。
Pellicule / 不可思議/wonderboy (track by 観音クリエイション)
透明感があり感傷的な音楽を生み出す不可思議/wonderboy。でも、もうこの人のポエトリーリーディングは聴くことができない。2011年6月23日、不慮の事故で他界してしまったから。念願の1stアルバムを出して2ヶ月も経たないうちの出来事だ。生前、彼は路上ライブで「僕が売れた時にこのこと(路上ライブ)を自慢してください!」と叫んでいた。その願いを自ら見届けることなく逝ってしまった。享年24歳。素晴らしい曲をこの世に残してくれたことに感謝したい。
“ 生きているということ
たった今この瞬間が過ぎていくということ
いつかは死ぬとわかっていながら
永遠なんてないとわかっていながら
それでも人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ”
関連記事
-
相撲を物理演算シミュレート
物理演算シミュレートとは、重力や摩擦などを計算し、実際に物がどう動いたり変形したりするかを仮想世界(
-
Daft Hands – Harder, Better, Faster, Stronger
最近、動画や画像ばかりのエントリーで申し訳ないですが… 地味カッコイイ。 これ撮
-
Serph – luck
坂本龍一や久石譲は好きですか?ご両人の音楽はインストゥルメンタル(以下、インスト)という音楽区分にな
-
Ben Westbeech 『There’s More To Life Than This』
イギリス出身のアーバン・ソウル・ミュージックのホープ、Ben Westbeechの2ndアル
-
iPad2 レビュー
レビューといっても、僕はiPad2を持っていないので、僕のレビューじゃありません。 iPad2
-
朝弱い人へ part.2
カナディアン・ナードヒップホップといえば、SOSO。このなんともいえない美麗で感傷的なトラッ
-
氷の張った湖にダイブ
まだまだ日本列島は暑いですね。そんな暑い時に見たいのがこんな動画。 氷の張った湖にダイブすると